「伸びる子」と「つまずく子」を分けているものは、何か
今日も私のブログにお越しいただき、ありがとうございます。
心より感謝申し上げます。
大阪教育大学附属池田中学校の合格発表の日、掲示板の前で親子で抱き合って喜ばれる姿。
今はインターネットでの発表になってしまったので、少し寂しく感じますが、あの合格発表の光景は、何度立ち会わせていただいても、胸が熱くなるものでございます。
厳しい中学受験の道のりを、お母さんがどれほど心を砕きながら、お子さんと一緒に歩んでこられたのか。
その一日には、ご家族の何年分もの時間が詰まっておられます。
ただ、合格を手にされたご家庭のなかには、入学後しばらくして、静かな戸惑いを感じられる方が少なくございません。
「大手進学塾のハードな課題も、あんなに頑張ってこなしていたのに、最近なんだかやる気がないという感じで」
「自由な校風だと聞いていたのですが、部活と宿題の板挟みで、いつも疲れ切っております」
そんなお声を、最近もいただくことが増えてきました。
合格に向けて必死に走っておられるさなかに、その先の景色まで気にかけておられる。
それだけ、お子さんの未来を大切に思っておられるということでございます。本当に、ありがとうございます。
附属池田は、ご存じのとおり、大阪教育大学の研究開発校として、独自の探究的な学びと自主自律の校風を大切にしてこられた学校です。
教科横断的な学びや、答えのない問いに向き合う授業、そして生徒自身が自分の学びを設計していく校風。
これは、合う子にとっては、これ以上ないほど豊かな環境です。
合格されたお子さんたちが、大学以降になって「あの学校で育ったから、今の自分がある」と語られる姿を、私も長年にわたり数多く見てきました。
もちろん、この記事は附属池田を悪く申し上げるためのものではございません。
ただ、長く受験指導と不登校支援の両方に携わってまいりましたので、合格の日から3年後、6年後にお子さんたちがどのような景色を歩んでおられるかを、少し離れた位置から見てきた者として、受験前のいまだからこそお伝えしておきたいことがあるのです。
合格した後、静かに二つに分かれていく
合格発表の日は、ご家族にとって忘れられない一日です。
ただ、その日から、お子さんたちは静かに二つの道に分かれていかれる、という感じがします。
附属池田の校風を追い風にして、自分の翼を広げていくお子さん。
一方で、合格までの走り方と、入学後に求められる走り方の違いに戸惑い、少しずつ失速していくお子さん。
この違いは、多くのお母さんがお考えになるような「もともとの学力の差」ではありません。
偏差値でも、性格の明るさでもありません。
ということは、合格前のご家庭での過ごし方、準備の質によって、実はかなり変えられる部分がある、ということです。
附属池田の「自主自律」を尊重する校風は、自ら考える力を大きく伸ばしてくださる、素晴らしい環境です。
裏を返すと、これはまだ発展途上にある中学生に対して、非常に高い自己管理能力と、答えのない問いに向き合う思考の体力を求める環境でもある、ということです。
大手進学塾の緻密なスケジュールのもとで、出された課題を真面目にこなすことで成績を上げてこられたお子さんにとって、突然与えられる自由と、答えのない問いは、目に見えない重圧となることが多々あります。
なお、附属高校への連絡進学制度につきましては、近年、運用の見直されました。
詳細は年度により変わりうるものですので、ここでは細かい数値には立ち入らずに申し上げますが、いずれにしても、日々の授業態度、提出物、定期テストの結果など、毎日の学校生活そのものが評価の対象になっていくということは、これからますます明確になっていくと思われます。
三つのご家庭の景色から
ここで、私がこれまでに伴走させていただいたご家庭を、複数の経験を組み合わせて再構成した典型的な三つの景色として、お伝えしたいと思います。
特定のお子さんの記述ではありませんが、附属池田を目指されるご家庭には、きっと重なるところがあるのではないかと思います。
一人目は、Aさんと呼ばせていただきます。
Aさんは、大手進学塾の緻密なスケジュール管理のなかで、走るべき道をきっちりと示してもらい、その通りに走ることで合格を勝ち取られたお子さんでした。
ところが、入学後、附属池田の学びは「今日、何をするかを自分で決めなさい」と静かに問いかけてくる環境です。
それまで、示された道を全力で走ることで結果を出してこられたAさんは、自由に見える海の広さに、かえって戸惑ってしまわれた。宿題は出されるものの、大手進学塾ほどの管理ではありません。
部活動も、探究学習も、日々の生活も、自分で組み立てていかなければならない。
半年ほど経った頃、Aさんは「何をどう頑張ればいいのか、わからなくなった」と、ぽつりとおっしゃったそうです。
二人目は、Bさんです。
Bさんは、真面目で、周囲の期待にきちんと応えようとされる、ご家庭の自慢のお子さんでした。
合格発表の日、ご両親の喜びようは、それはそれは大きなものだったそうです。
ただ、その日を境に、ご家庭のなかでBさんに向けられる期待の温度が、少しだけ上がった。
「せっかく附属に入ったのだから」
「附属高校への連絡進学のことも考えて」
「難関大学への受験も考えれるのでは」
悪意のない、むしろ愛情から出た言葉の一つ一つが、Bさんの背中に静かに積み重なっていったのです。
真面目で完璧主義なお子さんほど、「しんどい」と口にすることを、ご自身に許せないところがあります。
Bさんは、朝、制服を着ることができなくなる日が来るまで、ご家族に「助けて」と言えなかった。
仕方がない、という言葉で片づけたくはありませんが、それは、お子さんが弱いのでも、ご家庭が悪いのでもございません。
ただ、サインを受け止める場所が、家庭の外に一つもなかった、というだけのことでございます。
三人目は、Cさんです。
Cさんのご家庭は、受験期のずっと前から、食卓で「答えのない話」を楽しむ習慣を持っていました。
好奇心おおせいというのが良いのかもしれません。
「なぜ空は青いんだろう」
「この本の主人公は、どうしてこの選択をしたと思う?」
正解を出すためではなく、考える時間そのものを面白がる会話だったそうです。
Cさんは、正解を早く出すことも、もちろんできる。
ただ、それと同じくらい、答えのない問いに向き合う時間を楽しめるお子さんに育っておられた。
附属池田の探究型授業は、Cさんにとって、追い風そのものだったのです。
境界線は、どこにあるのか
三人のお子さんの景色を並べてみますと、境界線は、生まれ持った力の違いにあるのではない、ということが、静かに見えてきます。
境界線は、二つの場所にあると私は思っています。
一つは、正解を早く出す学習と、答えのない問いに向き合う時間を、ご家庭のなかで併走させてこられたかどうか、ということです。
附属池田の学びは、後者を強く求めてきます。
ここが、大手進学塾の対策だけでは届きにくい部分です。
もう一つは、お子さんが小さな戸惑いを口にできる場所が、ご家庭のなかとご家庭の外に、少なくとも一つずつあるかどうか、ということです。
これは非常に重要なポイントです。
お子さんが発される言葉や、ふとした表情、教科書を机に置いたままの背中。
その一つ一つには、まだ言葉になっていない何かが、静かに息づいていることがあります。
それを、急いで解釈せず、静かに耳を傾けてくださる大人が、家庭の内と外に一人ずついるということが、お子さんにとっては本当に大きな支えになるのです。
真面目で、お母さんの期待に応えようと頑張りすぎるお子さんほど、答えのない探究型の課題に、完璧な正解を求めて苦しまれます。
高いレベルの宿題と部活動の負担に押しつぶされそうになりながらも、「できない自分」を認めたくなくて、睡眠時間を削って過剰に適応しようとされる。
そして、誰にも助けを求められないまま、ある日、エネルギーが切れたように動けなくなってしまわれることがあるのです。
お子さんがつまずいておられるのは、怠けているからでも、お母さんの育て方が間違っておられるからでもありません。
ただ、お子さんなりに必死に環境に適応しようとされて、息切れしてしまわれているだけのことなのです。
受験前のいまから、できる三つのこと
一つ目は、正解を早く出す学習と、答えのない問いに向き合う時間を、ご家庭のなかで意識的に併走させることです。
大手進学塾のカリキュラムは、必ずしも後者を含んでいません。
ですので、食卓での会話や、休日の散歩の時間に、正解のない話題を、お母さんもお子さんも楽しむ時間を持っていただければと思います。
二つ目は、「教える人」から「見守る人」への役割の移行を、合格の後ではなく、いまから少しずつ試みておくことです。
合格の日を境に急に手を放そうといたしましても、それは、お母さんにもお子さんにも難しいことです。
受験期のいまから、お子さんが自分で決める余地を、ほんの少しずつ増やしていく。
この小さな積み重ねが、入学後に効いてきます。
三つ目は、家庭の外に、学校事情を熟知した第三者の目を、合格前から確保しておくことです。
合格されてから慌てて探されるのと、受験期から信頼できる場所を確保しておられるのとでは、入学後の景色がまったく変わってきます。
附属池田は、合う準備を持って迎えたご家庭にとって、これ以上ない環境です
繰り返しになりますが、附属池田は、素晴らしい学校です。
ただ、素晴らしい学校であるということと、どのお子さんにとっても自動的に追い風になるということは、必ずしも同じではありません。
合う準備を持って迎えられたご家庭にとって、附属池田はこれ以上ない環境になります。
そして、その準備は、受験期のいまから、十分に始められるものです。
合格の瞬間ではなく、入学後の3年間、6年間を、一緒に考えてくださる大人が、ご家庭の外に一人でも見つかっているかどうか。そこが、お子さんの中学生活の景色を、静かに、しかし確実に変えていきます。
「うちの子は、どうしてこんなに苦しそうなのだろう」。もし、そんなふうに感じておられるお母さんがいらっしゃいましたら、お子さんの言葉や表情の奥にある、まだ形になっていない気持ちを、一緒にゆっくり整理させていただければと思います。
附属池田を目指されるうえでのご不安、ご家庭での関わり方について、ご心配なことがおありでしたら、一人で悩んで抱え込まず、どうぞ個別にご相談ください。
お母さんのお話を、ゆっくりお伺いさせていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
