中学受験の生活面・メンタル面を考える(27)
「とりあえず安全圏で」が危ない。
偏差値だけで併願校を決める前に確認したい8つのこと
今日も私のブログにお越しいただき、ありがとうございます。
感謝申し上げます。
11月の夜、ダイニングテーブルの上に広げられた、塾からもらった偏差値一覧と併願プランの紙。
お子さんが寝静まったあと、お母様がペンを持ったまま動けなくなる。
「この組み方で、本当にいいんだろうか……」 模試の結果が返ってくるたびに、手元にある成績表と偏差値表を交互に見比べながら、夜遅くまでため息をつかれているお母様は少なくありません。
「本命校には届かないかもしれない。でも、せめてこの偏差値なら受かるはず」
「とりあえず安全圏の学校を押さえておかなければ」 そのように考えて、第2志望、第3志望、いわゆる「押さえ」の学校を、偏差値の数字だけで選んでしまってはいないでしょうか。
もちろん、偏差値は現在の学力と合格可能性を測る上で、決して無視してよいものではありません。
受験という現実を前にして、データは必要条件なのです。
ただ、偏差値はあくまで「入学難易度の指標」に過ぎないということを忘れないでいただきたいのです。
その数字が、「我が子に本当に合う学校か」「入学してから6年間、笑顔で通い続けられる学校か」という十分条件を満たしてくれるわけではありません。
特に今、塾の膨大な宿題に追われ、机の前に座ってもなかなか鉛筆が進まなかったり、やる気が見えなくなったりしているお子さんにとって、学校選びはとてもデリケートな問題なのです。
偏差値という数字だけで機械的に併願校を選ぶと、入学後に思わぬつまずきを引き起こす危険性があります。
ここでは、偏差値だけで選ぶことで陥りやすい「5つの落とし穴」についてお話しします。
偏差値だけで選ぶときに陥りやすい、5つの落とし穴
①「偏差値が下だから安全」という錯覚です。
お子さんの持ち偏差値よりも10ポイント低い学校だから絶対に合格できる、と安心してしまう気持ちはよくわかります。
しかし、学校によって出題傾向は大きく異なります。
長文の記述問題が多い学校もあれば、知識を正確に問う選択問題が多い学校もあります。
お子さんの得意・不得意と問題の相性が合わなければ、偏差値が届いていても不合格になる現実は確かにあるのです。
②「入れる学校」と「通い続けられる学校」の違いです。
偏差値という学力の輪切りでは、その学校の持つ空気感や日々の生活ペースまでは測れません。
今、宿題の多さに疲弊しきっているお子さんが、偏差値が適正だからという理由だけで、毎日の小テストや膨大な課題が課される厳格な管理型の学校に入学したらどうなるでしょうか。
逆に、手厚いサポートが必要なお子さんが、完全に自由放任の学校に進めば、学習のペースを見失ってしまうかもしれません。
このミスマッチが、入学後の不登校や不適応の大きな原因となるのです。
③「本人の意思」が不在の学校選びです。
「滑り止めだから親が決めておけばいい」と、見学にも行かずに受験校を決めてしまうケースがあります。
お子さん自身に納得感がないまま入学すると、どうしても「親に選ばされた学校」という感覚が心の奥底に残ります。
入学後に人間関係や学習面で壁にぶつかったとき、「自分が選んだ学校だから」という踏ん張りがきかなくなってしまうのです。
④受験日程の詰め込みによる心身への過負荷です。
偏差値表だけを見て日程を組むと、関西であれば、1月の統一入試日の午前に始まり、午後、2日目の午前・午後、3日目、4日目と続きます。
関東では1月校から始まり、2月1日の午前・午後、2日、3日と、休む間もなく連戦を強いるスケジュールになりがちです。
すでに心のエネルギーが低下しているお子さんにとって、不合格の知らせを受けたあとの次の一戦に向かう精神的負担は計り知れません。
⑤「第1志望に落ちた後」の心の置き場所です。
厳しい現実ですが、第1志望校ではなく、併願校や滑り止め校、押さえ校に進学する可能性は十分にあります。
その学校の門をくぐるとき、お子さん自身が「ここに来てよかった」と前を向ける要素が、偏差値以外に用意されているかがとても重要なのです。
偏差値の先で、確認していただきたい8つの視点
では、入学後のリアルを見据えて、偏差値以外に何を確認すべきなのでしょうか。保護者の皆様にぜひチェックしていただきたい「8つの視点」があります。
- 通学の現実的な負担
ドア・トゥ・ドアの時間はもちろん、乗り換えの回数や、満員電車の混雑具合まで想像してみてください。
体力や気力が低下気味のお子さんにとって、毎日の過酷な通学は心身を削る要因になります。 - 学習ペースと面倒見の方向性
宿題の量はどの程度か、補習の制度はどうなっているのか、小テストは頻繁にあるのか。
お子さんの性格が、管理されることで伸びるタイプなのか、自主性を尊重された方が伸びるタイプなのかを見極める必要があります。 - 学校の空気とルール
校風はもちろんのこと、スマートフォンの持ち込みやICT機器の扱い、生活指導の厳しさなども、お子さんの日々のストレスに直結します。 - 部活動の活発度と行事の規模
土日の活動頻度や、行事の準備にかかる時間がお子さんのキャパシティに合っているかを確認します。 - ICT環境と学習スタイル
タブレット配布の有無だけでなく、オンライン課題の比重が、現在のお子さんの学習習慣でこなせるレベルかを見極めます。 - 保護者の負担
PTA活動の頻度や、お弁当が必要か給食かなど、ご家庭のライフスタイルとすり合わせておくことが大切です。 - 進路実績の「見方」
全体の合格者数だけでなく、「真ん中の層の生徒がどこに進学しているか」を見ることで、入学後の現実的な立ち位置が見えてきます。 - 入学後のフォロー体制
万が一、成績がクラスの下位に落ちてしまったとき、学校がどのような個別フォローで引き上げてくれるかを確認しておきます。
これらをすべて完璧にチェックしようと気負う必要はありません。
お子さんの今の状態に合わせて、優先順位の高いものから見ていけば十分です。
迷わないための、5つのステップ
情報があふれる中で、忙しいご家庭でも実践できる「5つのステップ」をご紹介します。
- ステップ1:候補出し
まずは偏差値と無理のない通学範囲から、幅広く現実的な候補を10校前後ピックアップします。 - ステップ2:情報収集と絞り込み
すべての学校説明会に足を運ぶ時間がない場合は、オンライン説明会のアーカイブ動画を見たり、塾の先生の肌感覚を聞いたり、在校生のリアルな口コミサイトを参考にしたりして、効率よく絞り込みます。 - ステップ3:過去問の相性確認
必ず、少し古い過去問を解かせてみてください。
偏差値が届いていても、お子さんが「この問題は解きにくい」「なんとなく嫌だ」と感じる場合は、相性を慎重に見極める必要があります。 - ステップ4:本人の反応確認と通学シミュレーション
見学に行けなかった学校でも、休日の空き時間に親子で最寄り駅まで行き、学校の門の前まで歩いてみてください。
坂道の多さや街の雰囲気を肌で感じるだけでも、大きな収穫があります。 - ステップ5:日程の最適化
お子さんのメンタルや体力の限界をしっかりと考え、決して連戦になりすぎないように、パズルを組み直してあげてください。
学校選びの本当のヒントは、お子さんの中にあるのです
このステップの中で、特に大切にしていただきたいことがあります。
それは、ステップ4で学校の周りを一緒に歩いたときのお子さんの様子です。
「この学校、どう?」と直接聞いても、お子さんは親の期待を察して本音を言えなかったり、自分でもどう答えていいかわからなかったりするものです。
そんなときは、一緒に歩いているときの横顔、足取りの軽さ、何気なく口にした一言に、そっと意識を向けてみてください。
駅からの道のりを歩きながら、お子さんが少しでも表情を和らげた瞬間はなかったでしょうか。
逆に、門を見た瞬間に言葉が少なくなり、プレッシャーを感じているような緊張感が伝わってくることはなかったでしょうか。
必ずしも言葉にならなくても、お子さんの心はたくさんのサインを発しています。
何をしている時がリラックスしているのか、どんな環境なら息がしやすいのか。
その「言葉になる手前のサイン」に気づくことこそが、お子さんのペースに合った環境を探り当てる最大の鍵になります。
併願校選びは、親の安心感を得るための作業ではありません。
お子さんが「ここでなら、自分のペースで頑張れそう」と思える、大切な居場所を探すための時間です。
偏差値という必要条件を押さえつつも、最後は偏差値表から一度目を離し、お子さん自身を主役にした視点へ切り替えていただきたいと強く願います。
もし、今、「塾の面談では偏差値の話ばかりで、うちの子の性格に合う学校が本当にわからない」と迷われていたら。
「忙しさに追われて十分な情報収集ができず、この併願プランで子どもが潰れてしまわないか不安だ」と胸を痛められていたら。
どうか、一人で悩まないでください。
併願校の組み方は、ご家庭やお子さんの性格によって全く事情が異なります。
現状のモヤモヤを整理し、お子さんにとっての最善の道を一緒に見つけるために、個別相談でお話を伺えればと思います。
あわせて読んでおきたい記事 ▶「塾が合わないのか、受験そのものが苦しいのか。見分けるための整理法」
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
ー中学受験と不登校(1035)
