中学受験で、せっかく合格したのに、なぜ笑わなくなったのでしょうか
今日も、私のブログにたどり着いてくださって、ありがとうございます。
憧れの第一志望に合格し、新しい制服に身を包んだお子さんの姿を見た時、これまでの努力がすべて報われたような、そんな喜びに包まれた瞬間があったと思います。
塾への送り迎え、山のような宿題の整理、偏差値の増減に一喜一憂した日々。
それは大変だったけれど、親子で一つのものを積み上げてきた、かけがえのない時間だったはずです。
けれど、入学から数か月が経った頃、そのお子さんが以前のように笑わなくなった。
朝、起きてこられなくなった。
部屋に閉じこもる時間が増えた。
そんな変化に、静かに戸惑っておられるお母さんが少なくありません。
「せっかく合格したのに、どうして」という思いが、頭から離れない夜もあるかもしれません。
私も、そのお気持ちを想像するだけで、胸がぎゅっと締めつけらる思いです。
これから書くのは、これまで多くのお母さんからお聞きしてきたお話をもとに、個人が特定されないよう形を変えて、一つの物語として再構成したものです。
特定のどなたかのことではないということを、あらためてお伝えしておきます。
物語
あるお母さんは、お子さんの偏差値が伸び悩む時期、毎日のように焦りを感じていました。
宿題が終わらない我が子に、つい声を荒らげてしまうこともありました。
そこで一念発起し、起きる時間、勉強する教科、解き直す問題まで、すべてをお母さんが決めるようにしました。
その伴走の甲斐もあって、お子さんは見事に合格をつかみ取ります。
抱き合って泣いた合格発表の日は、それまでの苦労がすべて吹き飛ぶような、最高の瞬間だったそうです。
しかし、中学校生活が始まると、少しずつ歯車が狂い始めます。
私立中学は自由な校風が多く、学習の進め方も生徒の自主性に任されることが増えます。
お母さんは「もう中学生だから」と手を離し、見守ることにしました。
ところが、お子さんは自分から教科書を開こうとせず、宿題も出さなくなり、成績はどんどん下がっていきました。
「勉強しなさい」と声をかけると激しく拒絶し、やがて「お腹が痛い」「頭が重い」と朝、布団から出られなくなったのです。
お母さんは「あの時の管理が悪かったのだろうか」と、自分を責め続けました。
原因は、一つではありません
もちろん、関わり方が影響することはあります。
でも、不登校の背景がすべて親の関わり方にあるわけでは、決してありません。
新しい学校の自由度の高さに戸惑う子もいます。
友人関係がうまく築けずに苦しんでいる子もいます。
もともと変化に時間がかかる気質の子もいますし、学習量そのものが急に増えて、ついていくのに精一杯という場合もあります。
一つの原因に決めつけてしまうと、本当の姿から遠ざかってしまうことがあるので、いくつもの可能性を並べて見ていくことが大切だと感じています。
笑わなくなった、その奥にあるもの
もし、この物語の中の子どもが本当の気持ちを話せたなら、こんな声が聞こえてくるかもしれません。
「自分で決めたことなら、失敗しても納得できるのに」
「頑張れと言われるより、大丈夫だよと言ってほしかった」。
そして、もう一つ。
子どもは、大好きなお母さんの笑顔が見たかったのです。
お母さんが偏差値を見てため息をつく姿や、不安そうな顔をするのを見るのが、何より辛かった。
だからこそ「お母さんを喜ばせたい」「期待に応えたい」という一心で、自分の本当の気持ちや限界を隠し、言われるがままに走り続けていました。
自分の意志で進んできたという感覚を持てないままゴールに到達した途端、次にどう走ればいいのか分からなくなってしまった。
「自分の力で決めて、自分の足で歩く」という経験をしてこなかった子どもにとって、突然手渡された自由は、あまりにも広すぎて、立ちすくんでしまうものだったのかもしれません。
関わり方を、少しだけ変えていく
これまでの関わり方が間違っていた、ということでは決してありません。
お母さんは、お子さんのために本当に一生懸命でいらっしゃったのだと思います。
ただ、合格という一つのゴールを越えた後は、「管理する愛情」から「信じて見守る愛情」へと、関わり方を少しだけ変えていく時期なのかもしれません。
これは手を離すという意味ではなく、隣にいる位置を少しだけ変える、ということだと思います。
そのために、ご家庭で今日からできることがあります。
それは、子どもの課題と、親の課題をそっと区別してみることです。
勉強することや学校に行くことは、最終的には子ども自身の課題です。
お母さんにできるのは、「あなたが自分の気持ちをそのまま話しても、私はあなたの味方でいる」と信じられる、安全な居場所を家庭の中に用意することです。
「今日はどうだった?」と無理に聞き出すのではなく、「あなたが元気でいてくれたら、それだけで嬉しいよ」という姿勢を示すことで、子どもの心のエネルギーは、少しずつ戻っていきます。
一人で抱え込まないでください
こうした変化に向き合う時、お母さんが一人で抱え込む必要はまったくありません。
お父さんに今の様子を共有すること、ご兄弟がいらっしゃるならその関係性にも目を向けること、学校の担任の先生や養護教諭、スクールカウンセラーの先生に日常の様子を伝えておくことも、大きな力になります。
お父さんが、一歩引いた視点から社会復帰をあたたかく支える役割を担うなど、家族の中で役割を分担することも、お母さん自身が心のゆとりを取り戻すための、大切な土台になります。
それぞれの立場から見える子どもの姿は、少しずつ違うものです。
その違いを持ち寄ることで、初めて見えてくる真実があると思っています。
振り返りのための、いくつかの問い
もしご家庭の中で、次のようなことに心当たりがあれば、少し立ち止まって振り返っていただきたいと思います。
- お子さんの予定を、ほとんどお母さんが決めていないでしょうか。
- 失敗した時、まず結果を問う言葉が先に出てしまっていないでしょうか。
- お子さんが「自分の意見」を口にした時、それを最後まで聞く時間があったでしょうか。
これは正解を判定するテストではなく、今の関わり方をそっと確認するための、一つの目安として使っていただければと思います。
なお、体重の減少や、強い頭痛、長く続く不眠といった、はっきりとした身体の変化がある場合には、まずかかりつけの医師にご相談いただくことをお勧めしています。
心の問題として捉える前に、身体の状態を確認しておくことは、とても大切な順序だと考えています。
最後に
不登校や行き渋りは、人生の失敗でもなければ、これまでの努力が無駄になったわけでもありません。
子どもが「自分らしい歩み」を始めるために、今、一時的に立ち止まってエネルギーを蓄えている、大切な充電期間なのだと思います。
とはいえ、目の前で苦しむ我が子を前に、お母さんが不安を感じるのは、当然のことです。
どうか、一人で悩まないでください。ご家族に、学校の先生に、身近な誰かに、今のお気持ちをそっと話してみてください。
お子さんの表情が変わったその瞬間に、何かのサインが灯っているのかもしれません。
そのサインに、今日から少しだけ、目を向けていただけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りいたします。
