不登校からの学びと進路 学校復帰だけに限定しない4つのヒント
今日も私のブログにお越しいただき、ありがとうございます。
感謝申し上げます。
「このまま、うちの子の未来は閉ざされてしまうのではないか」。
子どもが学校へ行けなくなったとき、夜になってもこの思いが頭から離れず、眠れない時間を過ごしているお母さんがいらっしゃると思います。
大手進学塾に通い、偏差値や成績のことで頭を悩ませていた日々から一転し、朝起き上がることすらできなくなった子どもの姿を前にして、どうすればよいのか途方に暮れてしまうのは、仕方がないことです。
昼間はいつものように仕事や家のことをしていても、ふとした瞬間にスマートフォンで進路のことを調べてしまう。
「中学校を卒業できるのだろうか」
「高校には進めるのだろうか」
「勉強が遅れたまま、大人になったら困るのではないか」
考え始めると、次々に不安が浮かんでくることがあります。
これは、決して考えすぎているということではありません。
子どもの将来を大切に思うからこそ、自然に出てくる思いだと私は考えています。
この連載は、「不登校から、もう一度前を向くための13のヒント」を3回に分けてお届けしております。
第1回では心と身体の安全を守る5つの視点を、第2回では安心できる関係と主体性を支える4つの視点をお伝えしました。
今回の第3回(最終回)では、学びや社会とのつながりを組み直していく4つの視点をお伝えします。
ただ、これは①から⑬へと順番に進む回復の階段ではありません。
ご家庭の状況に応じて必要な項目を選び、行き来しながら読んでいただくための地図のようなものだとお考えください。
なお、本文でお伝えする内容は、複数のご相談を参考に一般化・再構成したものであり、特定の方の経過やすべての不登校の子どもに共通する過程を示すものではないことを、あらかじめお伝えしておきます。
「学校に戻ること」だけを目標にしてしまうと
子どもが「大丈夫」と言うとき、本当に大丈夫だから言っている場合もあれば、これ以上心配をかけたくないという思いから言っている場合もあります。
「勉強なんてどうでもいい」という言葉も、勉強そのものを手放したいというよりも、「できない自分を見るのがつらい」という気持ちが隠れていることがあります。
表に出てきた言葉だけでは、その子の中で何が起きているのか、すぐにはわからないことがあります。
学校復帰だけを唯一の目標にしてしまうと、まだ休息が必要な段階にいる子どもが、「学校に戻れない自分には価値がない」と自分自身を追い詰めてしまう場合があります。
行けないという状態の向こう側には、必ずしも一つの原因だけがあるわけではなく、本人の特性や学校という環境、友人関係、生活リズムなど、複数の要因が重なり合っていることがほとんどです。
学校へ戻ることも、学校以外の道を選ぶことも、今はまだ休むことも、最初からどれかが正解と決まっているわけではありません。
お子さんも、それを支えるご家族も、一つの答えに急いでたどり着く必要はないのです。
ここからお伝えする4つのヒントは、その選択肢を焦らずに見比べるための材料としてお使いください。
ヒント⑩ 学校との連絡方法を整理する
不登校が続き始めると、学校からの電話やメールに緊張するようになるお母さんがいらっしゃいます。
担任の先生は心配して連絡をくださっているとわかっていても、電話が鳴るたびに「また登校の話をされるのではないか」と身構えてしまうことがあります。
こうしたことが整理されていないと、毎朝「今日は学校に連絡すべきか」という判断だけで心がすり減ってしまいます。
たとえば、毎朝の欠席連絡が負担になっている場合、次のような一言で連絡方法の変更を相談してみることができます。
「いつもご連絡をいただきありがとうございます。朝の電話が本人にとっても私にとっても負担になっておりますので、欠席の連絡はメールやアプリでお願いできますでしょうか。状況に変化があった際は、こちらからご連絡いたします」
連絡の窓口を担任の先生だけに限らず、学年主任やスクールカウンセラーにも広げてみることも一つの方法です。今知りたいことを、あらかじめ書き出しておくと気持ちが乱れにくくなります。
・今の出席状況はどのように扱われているのか
・課題や試験について、どのような選択肢があるのか
・校内に短時間でも過ごせる場所はあるのか
・本人が望んだ場合、誰となら話せそうか
ここで、もう一つ考えておいていただきたいことがあります。学校に、本人の状態をどこまで伝えるかということです。
体調や気持ちの動きを詳しく伝えることで、先生の理解と配慮を得やすくなる場合があります。一方で、伝えた内容が思わぬ形で他の生徒や保護者に伝わってしまうのではないかと、心配になることもあると思います。
すべてを伝える必要はありません。「今は登校の話題になると本人が苦しくなります」「体調や生活の様子を見ながら考えたいと思っています」「進路に関わることだけは、必要な時期に教えてください」というふうに、伝える範囲をこちらで決めてよいのです。
可能であれば、「先生にどこまで話してもいいか」を、本人に確認してから伝えるようにしていただきたいと思います。本人の知らないところで、状態が詳しく共有されていたと後から知ると、子どもは安心できる場所を一つ失ってしまうことがあります。
ですので、学校の先生にお伝えになる時は、具体的には、
いつもお世話になっております。
現在、本人は登校について考えること自体に強い負担を感じている様子です。しばらくは登校を促すご連絡よりも、出席、課題、試験、進路に関する必要事項を中心に、メールでお知らせいただけますと助かります。
本人の状態については、本人が話せる範囲を大切にしたいと考えております。学校で可能な配慮について、改めてご相談させてください。
このようにお伝えになると良いと思います。
学校にすべてを任せることでも、学校から完全に離れることでもなく、今のご家庭にとって無理の少ない連絡のあり方を探すことが大切です。
もちろん学校によって対応の柔軟さには差がありますが、連絡の仕組みを一度整理しておくだけで、日々の緊張感は変わってきます。
ヒント⑪ 本人が望む範囲で、学びとの細い糸を残す
「もう何か月も勉強していません」というお話をうかがうことがあります。
中学受験を経験してきたご家庭ほど、予定表に沿って学習を積み重ねてきた分、何もできないように見える時間が怖く感じられることがあります。
ただ、学校に行けないほど疲れている子どもにとって、教科書を開くことが、学校で感じた苦しさを思い出すきっかけになる場合があります。
勉強の話をすると部屋へ戻る。プリントを置くと不機嫌になる。このようなときは、学力の問題だけでなく、学ぶことに向かうための心の余裕が小さくなっているのかもしれません。
一方で、ゲームの攻略を調べること、好きな動画の内容を家族に説明すること、電車の路線を調べることに集中する姿が見られることもあります。
それを、学校の勉強をしていないから意味がないと急いで判断しなくてもよいと思います。
興味を持ったことを調べる、わからないことを人に聞く、できたことを誰かに話してみる。そこには学びにつながる小さな動きが含まれていることがあります。
「今日は何を勉強したの」と聞く代わりに、「それはどういうものなの」と尋ねてみる。
すぐに教科の学習へ結びつける必要はありません。
学びとの細い糸は、本人が「もう少しやってみたい」と言ったときに、少しずつ増やしていく。
この順番を守っていただきたいと思います。
ヒント⑫ 学校復帰の条件を細かく考える
「いつから学校へ行けますか」という問いに、はっきり答えが出ないことは少なくありません。
子ども自身も、「行きたい気持ちはあるけれど行けない」と感じていることがあります。
朝になるとお腹が痛くなる。校門までは行けそうでも、教室に入ることを考えると動けなくなる。
このような状態で「行くか、行かないか」という二つだけで考えると、子どもはとても追い詰められてしまいます。
・教室に入るのか、別室登校なのか
・毎日なのか、週に何回かなのか
・午前だけなのか、給食の時間まで残るのか
・担任の先生とだけ話すのか、クラスメイトとも顔を合わせるのか
朝から登校することが難しいなら、放課後に先生と短く会うことなら可能かもしれません。
教室に入れないなら、保健室や相談室で過ごせるかもしれません。
学校に相談する際は、「まずは週に一度、放課後に保健室へ顔を出すことから始めさせていただけますでしょうか」というふうに、具体的な形で提案してみると、先生方も対応を考えやすくなります。
「校門まで行けたのに、どうして入れなかったの」ではなく、「校門まで行ってみようと思えたのは、どんな気持ちだったの」と聞いてみる。
答えが返ってこない日があっても、仕方がないと思います。
言葉にできないときには、本人の中でもまだ整理がついていないことがあるのです。
学校復帰の条件を細かく考えるということは、決して妥協ではありません。
むしろ、お子さんのペースを尊重しながら着実に前に進むための、現実的な工夫だと私は考えています。
ヒント⑬ 学校以外の学び方も比較してみる
「学校へ戻る以外の道を考えたら、逃げになるのではないか」と迷われるご家族もいらっしゃいます。
反対に、「もう学校には戻らなくてよい」と、早い段階で結論を急ぎたくなることもあります。
けれども、学校へ戻ること、学校以外の場で学ぶこと、しばらく休むことは、最初からどれか一つだけを選ばなければならないものではありません。
・教育支援センター(適応指導教室など、公的な居場所)
・フリースクールなどの民間の居場所
・オンライン学習や通信教育
・家庭教師や個別指導での学習継続
これらの場を比べるとき、「雰囲気が合うかどうか」だけで決めてしまうと、後になって想定していなかった負担が出てくることがあります。次のような点も、あわせて確認していただきたいと思います。
・自宅から無理なく通える距離にあるか
・そこに、本人が安心して話せる大人がいそうか
・疲れたときや気が乗らないときに、休める場所や時間があるか
この3つは、居心地の良さだけでは見えてこない、続けられるかどうかを左右する大切な視点です。
そのうえで、特に民間のサービスを検討する場合は、運営の透明性についても確認していただきたいと思います。
・費用の内訳と、追加でかかる可能性のある費用
・運営している主体はどのような団体か
・スタッフの人数や、資格・研修の有無
・緊急時の対応や、安全管理の体制
・本人の情報がどのように扱われ、誰と共有されるのか
・出席扱いとして認められる可能性があるかどうか
・合わないと感じたときの退会や休会の条件
こうしたことは、パンフレットやホームページだけではわからない場合もあります。見学や面談の際に、遠慮せずに質問していただいてよいものです。信頼できる場所ほど、こうした質問にきちんと答えてくれるものだと思います。
見学の前に、電話やメールで質問をしてもよいと思います。
たとえば、次のように尋ねることができます。
見学を検討しております。本人は初めての場所に緊張しやすいため、見学当日に無理をしないための配慮について伺いたいです。
また、スタッフの体制、安全管理、費用の内訳、欠席時や退会時の扱い、個人情報の管理についても教えていただけますでしょうか。
在籍校との連携や出席扱いについて、これまでどのように確認されているかも伺えますと助かります。
見学に行っても、すぐに決めなくてよいのです。「どうだった」と答えを求めるより、「疲れたね」「行ってみて何か気になったことはあった」と、帰り道に話せる余白を残しておくことも大切だと思います。
子どもが「もう行かない」と言ったときも、その場所が合わなかったのか、初めての場所で緊張しただけなのかは、必ずしも同じではありません。
一度の反応だけで、その子に居場所がないと決めなくてもよいと思います。
中学校の卒業と高校進学は、今の欠席状況からでも選べる道がある
義務教育である中学校は、欠席が続いても卒業できることがほとんどです。
よほど、ご家族や本人が学校に残ることを望まない限り、卒業できると考えてよいでしょう。
私立中学でも、その学校のままでは卒業できなくても、退学して公立中学に転校すれば、たとえ1日も通わなくても卒業できます。
また、高校には全日制以外にも通信制・定時制・高等専修学校などがあり、子どもの状況や希望によって、通える学校がたくさんあります。
公立の全日制高校の受験でも、入試で欠席状況を説明できる自己申告書などの書類を用意している自治体もあります。
これは、不登校の子どもが公立高校の受験をする際に、欠席が多い理由や志望動機、高校生活への抱負等を、中学校を通さずに直接高校に伝えるための書類です。
通信制高校は、通う日数などの面からも、小中学校に通えなかった子ども達が選択しやすい高校として考えることがとても多くなっています。
また、学びの多様化学校、いわゆる不登校特例校としての高校も全国に増えてきています。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387004.htm
経済的な問題がある場合は、高等学校就学支援金制度(高校無償化)もあります。
ただし、直接、生徒・保護者が受け取れるものではありませんし、諸費用は保護者の負担のままです。
取り扱いは自治体・学校ごとに異なるため、必ず在籍校や教育委員会にご確認ください。
相談先は、目的によって役割が違います
ここまで4つのヒントをお伝えしてきましたが、実際に動こうとすると、「どこに相談すればいいのかわからない」という壁にぶつかることが多いと思います。
・心身の症状が強い場合は、医療機関へ
・出席や学習、校内での配慮については、学校へ
・学校以外の公的な居場所については、教育支援センターへ
・民間の居場所を探す場合は、フリースクールなどへ
・ご家庭での関わり方を整理したい場合は、個人の相談窓口へ
このように、相談先にはそれぞれ得意な領域があります。
一つのところにすべてを解決してもらおうとすると、かえって話が噛み合わなくなってしまうことがあります。
この状態は、ご家族の関わりだけで起きるものではありません。
ご家族だけで悩んで抱え込まず、必要に応じて学校や専門家などの支援を求めていただきたいと思います。
なお、食事や睡眠の急激な変化、自分を傷つけるような様子や、それをうかがわせる言動が見られる場合には、様子を見ようとせず、できるだけ早く医療機関や相談窓口に連絡していただきたいと思います。
こうしたサインは、本人が言葉にできないほど追い詰められているときに現れることがあります。
判断に迷う段階であっても、早めに相談することが、結果として本人を守ることにつながります。
保護者ご自身のことも、どうか大切にしてください
ここまで、子どもとの関わり方や学校との連絡について考えてまいりましたが、最後に、支えているお母さんご自身のことにも触れておきたいと思います。
子どものことを考える時間が増えるほど、ご自身の睡眠時間が削られていくことがあります。
夜中に目が覚めて、そのまま眠れなくなってしまう。
そのようなお話を、これまで何度もうかがってきました。
仕事を続けるべきか、休むべきか、辞めるべきか。
この判断も、簡単に答えの出るものではありません。
ということは、今すぐに大きな決断をしなくてもよいのです。
今の働き方を維持しながら、必要な部分だけ調整できないか、職場に相談してみることも一つの選択です。
ご夫婦の間で、「もっと厳しく接するべきだ」「今は休ませるべきだ」というふうに、考え方の違いが表面化することもあります。
これは、どちらかが間違っているということではなく、それぞれが子どもを大切に思うからこそ生まれるずれだと思います。
方針を完全に一致させることを急がず、まずはお互いの心配の中身を、一度言葉にして伝え合ってみていただきたいと思います。
そして、これは本当に大切なことですが、ご自身の気持ちを話せる相手を、どうか確保していただきたいと思います。
配偶者、友人、学校のスクールカウンセラー、あるいは個人の相談窓口など、話す相手は誰であってもかまいません。
子どものことを一番に考えるお母さんほど、ご自身のつらさを後回しにしてしまう傾向があります。
お母さんの心が少しでも安定していることは、子どもにとっても大きな支えになります。
今、ご家庭の状況を振り返るためのチェック項目
最後に、今の状況を落ち着いて見直すための項目を挙げておきます。これはお子さんやご家族を採点するためのものではなく、あくまで現状を整理するための道具としてお使いください。
□ 学校との連絡窓口や頻度は、ある程度決まっているか
□ 学校へどこまで本人の状態を伝えるか、本人と確認できているか
□ 学びとのつながりは、本人が望む範囲にとどまっているか
□ 学校復帰の条件を、細かく分けて考えたことがあるか
□ 学校以外の学び方について、運営の透明性まで含めて調べたことがあるか
□ 相談先を、目的に応じて使い分けられているか
□ ご自身の睡眠や気持ちを話せる相手について、考えたことがあるか
一つでもチェックがつかない項目があったとしても、それは決して悪いことではありません。
今、どこから手をつければよいかが見えてきた、という感じで捉えていただければと思います。
一つの答えに、急いでたどり着かなくていいのです
朝、学校へ行けなかった子どもが、夕方にリビングで少しだけ好きなことを話してくれた。
見学先から帰る車の中で、「あそこは人が多かった」と一言だけ言った。学校からの連絡に、以前より落ち着いて返事ができた。
そのような小さな変化の中に、次の道を考える手がかりが見つかることがあります。
学校へ戻ることも、学校以外の道を選ぶことも、今は休むことも、最初からどれか一つが正解と決まっているわけではありません。
お子さんも、それを支えるお母さんも、一つの答えに急いでたどり着く必要はないのです。今すぐ答えにたどり着けなくても大丈夫です。
子どもが今いる場所から、無理なくつながれる学びや人との関わりを、一緒に探していっていただければと思います。
もし、今の状況をどう整理すればよいか迷われたときは、個別にご相談いただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
