夜眠れない受験生に起きていること―睡眠が崩れると最初に何が変わるのか―
中学受験の生活面・メンタル面を考える(13)
今日も私のブログにお越しいただきありがとうございます。
心から感謝申し上げます。
「こんなに頑張っているのに、なぜ伸びないんだろう」
小学6年生の女の子のお母さんが、相談に来られたのは一昨年、10月のことでした。
偏差値は48。
志望校には届いていない。
宿題も全部終わらない日が続いている。
でも、少しでも上の学校に行かせてあげたい。そのためにと、毎晩12時過ぎまで机に向かわせていた。
「先生、うちの子、頑張っているんです。毎晩遅くまでやっているんです。それなのに、なんで成績が上がらないんでしょうか。」
お母さんの声には、焦りと疑問と、そこに怒りの感情も混じっていました。
私はまず、一つだけ聞きました。
「何時に寝ていますか?」
「……12時半か、1時くらいです。起きるのは6時半なので、5時間半くらいでしょうか」
「この3か月、ずっとそうですか?」
「はい、ずっとそうです」
私の中で、すべてがつながりました。
睡眠が崩れると、最初に変わるのは「点数」ではない
多くの親御さんは、睡眠不足の影響を「眠くて集中できない」というイメージで捉えています。
でも、実際に睡眠が崩れた子どもに最初に現れるのは、もっと深刻なことです。
最初に変わるのは「感情のコントロール」です。
眠れていない子どもは、わずかな刺激で泣きます。
少し注意されただけで激しく怒ります。
理由もなく落ち込みます。
酷くなると、何も話もしていないのに、涙をこぼしていることもあります。
「最近、ちょっとしたことですぐ泣くんです」
「声をかけただけで怒鳴り返してくるので、どう接したらいいか…」
「机に向かっているんですけど、ぼーっとしていることが多くて」
こういった相談が増えてきたとき、私はまず必ず睡眠の状況を確認します。
多くの場合、睡眠が大きく崩れています。
なぜ感情が先に壊れるのか。
脳の仕組みから言えば、睡眠が不足すると、前頭葉の働きが最初に落ちます。
前頭葉は「感情を制御する」「物事を論理的に考える」「衝動を抑える」という高度な機能を担っています。
つまり、睡眠が崩れると、まず「人間らしく考える力」が失われていくのです。
この状態で勉強させても、効率はほとんどありません。
単語を眺めることはできても、意味を整理することができない。
問題を読むことはできても、筋道を立てて考えることができない。
「やっているのに、身についていない」状態が続くのは、脳が疲弊しているからです。
「深夜まで勉強した記憶」が、翌朝には残っていない理由
睡眠には、記憶を定着させる働きがあります。
日中に学んだことは、睡眠中に整理・統合されて、はじめて「使える記憶」になります。
これは睡眠科学の基本中の基本ですが、中学受験の現場では驚くほど軽視されています。
深夜まで勉強させることで、親御さんは「それだけインプットした」と思います。
でも、子どもの脳には、そのインプットを整理する時間が与えられていない。
結果として、
「昨夜やったはずなのに、今日のテストで全然できなかった」 「同じ問題を何度も間違える」 「塾で習ったことを忘れている」
こういったことが起きます。
頑張っているのに伸びない、の正体の一つはここにあります。
眠れない夜が続くと、子どもの「自己評価」が壊れていく
もっと怖いのは、感情でも記憶でもなく、「自己評価」への影響です。
睡眠不足の状態が続くと、子どもは自分のことを「どうせ自分はできない」と思うようになっていきます。
頑張っても結果が出ない、という体験が積み重なるからです。
本当は、脳の問題です。
睡眠が足りていないから記憶できない、感情を制御できない、集中できない。
でも、子ども本人は、「自分が悪い」「自分はダメだ」と感じていきます。
このことは、大人でも起こることです。
これが、中学受験における本当のリスクだと私は考えています。
偏差値が50に届かなくても、宿題が全部終わらなくても、それは今の時点では珍しいことではありません。
でも、「どうせ自分には無理だ」という感覚が根づいてしまった子どもは、受験への意欲を失っていきます。
やる気がないのではなく、やる気を支える「自分への信頼」が崩れていくのです。
お母さんが焦るほど、子どもは眠れなくなる
相談に来られたお母さんと話しながら、私が気になったもう一つのことがありました。
「夜、なかなか寝つけないと子どもが言っているんです。寝ようとしても頭が冴えてしまって」
これは、慢性的な睡眠不足とストレスが重なったときに起きることです。
本来なら疲れているはずなのに、眠れない。
頭の中で「明日のテストが心配」「あの問題が解けなかった」「お母さんに怒られた」という思考がぐるぐる回り続ける。
そして、お母さんが「もっと頑張りなさい」「なんでできないの」と声をかけるほど、子どものストレスは高まり、さらに眠れなくなる。
眠れないから成果が出ない。
成果が出ないから親が焦る。
親が焦るから子どもがさらに眠れなくなる。
この悪循環に、多くの受験家庭がはまっています。
では、どこから立て直すか
私がそのお母さんに最初にお伝えしたのは、勉強方法でも志望校の話でもありませんでした。
「まず、10時半には布団に入れてください。勉強が残っていても、その日は終わりにしてください」
お母さんは少し驚かれていました。「でも、それだと勉強が全部終わりません」
「今は、終わらない勉強を深夜までやることで、翌日の集中力を削っています。短く眠って長く勉強するより、しっかり眠って短い時間で集中する方が、結果につながります」
2週間後、お母さんから連絡がありました。
「先生、子どもの表情が変わりました。朝、少しだけ機嫌よく起きられるようになりました。テストの結果もまだ大きく変わってはいませんが、本人が『昨日やったことが今日頭に残っている気がする』と言っていました」
睡眠を守ることが、まず行っていただかないといけない、最初の一手です。
「まだ間に合う」と感じているあなたへ
今、お子さんが毎晩遅くまで机に向かっている。
宿題が終わらず、焦っている。偏差値も思うように上がらない。
でも、夜眠れていない、朝ぼーっとしている、少しのことで泣いたり怒ったりする、というお子さんの姿があるなら、それは「怠け」でも「やる気のなさ」でもありません。
脳と心が、限界に近づいているサインです。
気づいたいまなら、立て直すことができます。
睡眠のこと、生活リズムのこと、お子さんのメンタルのこと、受験との向き合い方のこと。一人で抱えず、お話ししてみてください。
相談は、ここから受け付けています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ、今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
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個人サイトより: 朝起きられない受験生を責める前に見てほしい4つの視点
https://ktani.info/blog/朝起きられない受験生を責める前に見てほしい4つの視点/
ー中学受験と不登校(1021)ー



