ゲームやYouTubeが増えたとき、本当に疑うべきなのは甘えではありません
逃げているのではなく、逃げなければならない状態になっている
中学受験の生活面・メンタル面を考える(12)
今日も私のブログにお越しいただきありがとうございます。
心から感謝申し上げます。
小学5年生の男の子のお母さんが、私のもとに相談にいらっしゃいました。
開口一番、こうおっしゃいました。
「先生、うちの子、最近ゲームが全然やめられないんです。宿題もせずに、気づいたら深夜まで。何度叱っても、次の日にはまた同じことの繰り返しで」
声には、とても疲れがにじんでいました。
「最初は息抜きだと思って黙って見ていたんですけど、もう2ヶ月以上こうで。正直、このままじゃ受験どころじゃないと思って。ゲームを取り上げようかとも思うんですけど、それも何か違う気がして……」
「それも何か違う気がして」
その言葉に、私はこう答えました。
「その感覚、正しいと思います」
ゲームを取り上げても、根っこは何も変わらない理由
このお母さんの「何か違う気がして」という感覚は、とても大切なことを捉えていました。
ゲームを取り上げても、根っこは何も変わりません。
だから、何の解決にもなりません。
なぜなら、ゲームが増えた本当の理由は「甘え」でも「意志の弱さ」でもないからです。
この男の子は、大手進学塾の5年生のクラスで、毎週の組分けテストのたびに成績が下がり続けていました。
帰宅するなり「今日どうだった?」と聞いてくるお母さん。
結果を見て、黙ってため息をつくお父さん。
塾では先生に「もっとやらないと」と言われる。
家に帰っても、結果を問われる。
「結果」を問われない場所が、どこにもない。
ゲームの世界だけが、点数も、クラスも、誰かのため息も存在しない場所だったのです。
逃げているのではなく、逃げなければならない状態になっていた。
私がそのことをお母さんに話すと、少しの間、黙っていらっしゃいました。
「……そうか。あの子、家でも追い詰めてたんですね、私」
大手進学塾の受験生活が、子どもに与えているもの
ここで少し、受験生活の実態を正面から見てみます。
大手進学塾の授業は、週3〜4日、夜9時・10時まで続きます。
帰宅してから夕食、入浴、宿題。
算数・国語・理科・社会の四教科をすべてこなすと、就寝は深夜0時を超えることも珍しくありません。
そして毎週、復習テストや組分けテストがあります。
クラスが上がるか、下がるかに影響します。
上がれば安堵。下がれば叱責。そのサイクルが、何ヶ月も続きます。
「頑張っても頑張っても、結果が伴わない」と感じはじめたとき、子どもの心に何かが起きます。
勉強への意欲より先に、「これ以上頑張れない」という感覚が出て来る。
そのとき、心は無意識のうちに「休める場所」を探しはじめるのです。
それがゲームであり、YouTubeです。
(関連記事:朝起きられない受験生を責める前に見てほしい4つの視点)
「禁止」したとき、何が起きるか
ゲームを取り上げた。
その日の夜は、子どもは机に向かったかもしれません。
でも、1週間後、そのお母さんから連絡が来ることがあります。
「先生、ゲームを取り上げたら、今度は朝起きられなくなって……」
逃げ場を奪われた心は、別の出口を探します。
体の症状、具体的には腹痛、頭痛、朝起きられない、発熱などとして現れることが多いのです。
私がこれまで相談やカウンセリングで向き合ってきた不登校のお子さんの多くが、「ゲームやYouTubeが急に増えた時期」を経ていました。
そのときに「甘えだ」と判断し、禁止・叱責が続いたご家庭ほど、その後の状態が深刻になっていきました。
あるお母さんは、お子さんが完全に学校に行けなくなってから、こうおっしゃいました。
「あのとき、ゲームを取り上げるんじゃなくて、なんで急に増えたのかを聞いてあげていれば、違ったかもしれない」
ゲームやYouTubeの増加は、子どもが発する最初のSOSである可能性があります。
そのメッセージを「甘え」と決めつけることは、そのSOSを握りつぶすことと同じことになってしまうのです。
(関連記事:受験継続を親子で話し合う方法)
まず「観察」してほしい4つのこと
ゲームやYouTubeが増えたとき、最初にすべきことは「禁止」ではなく「観察」です。
✔ いつから増えたか
テストの結果が出た後か?
クラスが下がった後?
タイミングに必ず意味があります。
「2ヶ月前から」というように時期が特定できると、何がきっかけだったのかが見えてきます。
✔ 深夜まで続いているか
1〜2時間程度の息抜きと、深夜まで続く「逃げ込み」は別物です。
時間の長さは、心の疲弊の深さに比例していることがあります。
✔ どんな表情でやっているか
楽しそうに笑っているか、それともぼんやりと画面を眺めているだけか。
後者なら、楽しんでいるのではなく、現実を忘れようとしている状態かもしれません。
✔ 声をかけたときの反応
「ご飯できたよ」という何気ない一言に、過剰に怒る・無視する—その反応自体が、心の余裕のなさを表しています。
「禁止」より先にかけてほしい、たった一言
観察の次にすることは、問いかけです。
「なんでゲームばっかりするの?」ではありません。
「最近、塾しんどくない?」
責める言葉ではなく、「あなたのことを心配している」という姿勢を先に伝えること。
子どもは、親が「責めようとしている」と感じた瞬間に、心を閉じます。
逆に「お母さんはわかってくれようとしている」と感じた瞬間、少しずつ言葉が出てきます。
冒頭のお母さんは、その後、息子さんにこう聞いたそうです。
「最近、塾どんな感じ?しんどかったりする?」
すると息子さんは、少し間を置いてから、こう答えました。
「……テスト、もう受けたくない」
それが、本音でした。
ゲームのルールを決めるのは、その後で十分です。
「何時まで」「どこで」といったルールを子どもと一緒に決めるプロセスが、子どもの自律心を育て、結果として依存を緩やかに解いていきます。
(関連記事:中学受験を家庭だけで抱えないために)
まとめ:逃げ込んでいる「場所・行為」より、逃げ込まなければならなかった「理由」を
ゲームやYouTubeが増えたとき、多くの親はその「場所・行為」を問題にします。
でも、本当に見なければならないのは、子どもが「なぜそこに逃げ込まなければならなくなったのか」という理由のほうです。
責めるより、観察してほしい。
禁止するより、問いかけてほしい。
取り上げるより、話を聞いてほしい。
その一歩が、子どもの心の限界を、ギリギリのところで食い止めることになります。
「うちの子、まさにこの状態かもしれない」と感じた方へ。
ゲームが止まらない、勉強に向かえない、何かがおかしい——そういった状態でのご相談も、ぜひそのままお話しください。
お母さん、一人で抱え込まないでください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い1日でありますようにお祈りしております。
ー中学受験と不登校(1020)ー



