中学受験の生活面・メンタル面を考える(23)
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削ることに、罪悪感を抱いていませんか
中学受験の大手進学塾に通わせていらっしゃるお母さんから、こんなご相談をいただくことが本当に多くあります。
「先生、うちの子、宿題が全然終わらないんです。夜中までかかっているのに、塾の小テストでは点が取れなくて。塾の先生からは『家庭学習が足りない』と言われるばかりで、もうどうしたらいいのか分からなくて」
こうおっしゃるお母さんの声は、たいてい少し震えています。
おそらく、何度も何度もご自身の中で問い直してこられたのだと思います。
「ここで手を緩めたら、もう取り返しがつかないんじゃないか」
「他のお子さんはもっとがんばっているのに、うちだけ甘やかしていいのか」
「削ったぶん、偏差値が下がってしまったらどうしよう」
本当に、毎日よく踏ん張っていらっしゃいます。
ただ、私が長年、子どもたちとそのご家庭を見てきて思うのは、立て直せたご家庭には、ある共通点があるということなのです。 それは、「正しく削れた」ということなのです。
偏差値50前後のお子さんに、いま起きていること
先日ご相談にいらした、小学6年生のお子さん、仮にA子さんとしましょう。
A子さんはとても真面目で、言われたことはきちんとやろうとするお子さんです。
ただ、塾から出される宿題の量が膨大で、学校から帰ってきてから寝る直前まで机に向かっても、終わりが見えない。 特に算数が苦手で、応用問題になると一問に30分以上かかることも珍しくありませんでした。
お母さんは「ここで頑張らないと志望校には届かない」という思いから、つい「早くしなさい」「まだ終わらないの?」と声を荒らげてしまう。
A子さんは、だんだん口数が減っていきました。
大好きだったはずの読書の時間もなくなり、いつも何かに追われているような、不安げな表情を見せるようになったのです。
このとき、お子さんの中で何が起きているのか。
塾の宿題は、ご存じのとおり、上位層のお子さんが「ちょうど解ける量」を基準に組まれています。
ということは、偏差値50前後のお子さんにとっては、最初から物理的に「全部こなすのは無理」な分量である、ということなのです。 それを毎週、毎週、突きつけられている。
大人で言えば、毎日終わらない仕事を持ち帰り、上司から「君は努力が足りない」と言われ続けているような状態です。 これが半年、1年と続けば、心が動かなくなるのは、仕方がないことだと思います。
「やる気がない」のではなく、「やる気を出すための燃料が、もう残っていない」。
お子さんの「だるい」「眠い」「やりたくない」という言葉の向こう側には、こういう想いが隠れていることが、本当に多いのです。
私がずっと大切にしてきたことがあります。
それは、
「子どもの言葉や行動の向こう側の想いを聞く」
ということなのです。
「宿題やりたくない」「塾に行きたくない」は、単なる怠けやわがままではありません。
「もう、いっぱいいっぱいです」という、声にならないSOSなのです。
では、何を削るのか
ご相談に来られたお母さんに、私はよくこの順番でお話しします。
①まず削るべきは「夜更かしして宿題をする時間」
意外に思われるかもしれません。 ただ、これは絶対に最初です。
睡眠が6時間を切る日が続くと、前日に解けた問題が翌日に解けなくなります。
記憶の定着は睡眠中に行われるからです。 ということは、夜遅くまで宿題をやらせても、それは「やったつもり」が積み上がるだけで、成績にはほとんど反映されないということなのです。
22時には寝かせる。 そう決めることが、何より先です。
②次に削るのは「宿題の量」
ここが、お母さんが一番怖いところだと思います。 「全部やらせないと、ついていけなくなるのではないか」と。
ただ、私の経験で申し上げると、宿題を「全部こなそうとして全部中途半端」になっているお子さんよりも、「8割に絞って、そこを完璧にした」お子さんのほうが、必ずしも偏差値で負けることはありません。
むしろ、後者のほうが3か月後に伸びていることのほうが多いのです。
優先順位は、塾の先生に「うちの子の今の状況で、どれを最優先にすべきですか」と直接聞いてしまうのが早道です。 プロですから、ちゃんと答えてくださいます。
A子さんのお母さんも、勇気を出して塾の先生に相談されました。
本人が算数の応用問題に時間を取られすぎて疲弊していることを正直に伝え、応用問題は「まず1問だけ解いてみる」という形に調整してもらったのです。
たったそれだけのことでした。 それでもA子さんは、心に余裕が生まれたことで集中して問題に取り組めるようになり、基本問題でのミスが激減しました。
③最後に検討するのが「通塾回数・拘束時間」
ここまで削ってもなお、お子さんが朝起きられない、笑顔が消えている、食欲が落ちている。
そういうサインが出ているときは、通塾そのものを見直す段階です。
週4を週3に。 夜遅くまでの居残り自習をやめる。 日曜特訓を一度休んでみる。
「そんなことをしたら、周りに遅れる」と思われるかもしれません。
ただ、潰れてしまったら、遅れるどころか、戦線そのものから降りざるを得なくなります。
ここは、お母さんが守ってあげていい領域なのです。
「削る順番」を間違えると、立て直せない
ご相談を受けていてもどかしいのは、削る順番が逆になっているケースです。
睡眠と食事を削って、宿題と通塾を死守しようとされる。
気持ちは痛いほど分かります。
中学受験は、ご家庭にとって本当に大きな投資ですから、削ることに勇気が要るのは、もちろんのことだと思います。
ただ、お子さんの体と心は、削ってはいけない順番に並んでいます。
- 睡眠
- 食事
- 親子で笑う時間
- 宿題の総量
- 通塾回数・拘束時間
上から3つは、削ってはいけません。
下の2つから、お母さんの判断で削っていいのです。
「削る」は、敗北ではありません
あるお母さんが、相談のあとにこうおっしゃいました。
「先生に話を聞いていただいて、ようやく『削っていいんだ』と思えました。ずっと、削ったら負けだと思っていました」
私は、こう申し上げました。
「削ることは、お子さんを信じることでもあるんですよ。今の量で潰れずに走り続けるより、量を絞って、お子さんが自分から机に向かう状態を取り戻すほうが、結果的にずっと遠くまで行けます」
そのお子さんは、3か月後に偏差値を6上げました。
何より、家の中で笑い声が戻ったと、お母さんが報告してくださいました。
お子さんが机に向かわないのは、怠けているからではありません。
「もうこれ以上は無理」というサインを、言葉ではなく行動で発しているのです。
その声にならない声を聞いてあげられるのは、塾の先生でも家庭教師でもなく、毎日そばにいるお母さんだけなのです。
一人で決めなくて、いいのです
「削るべきだとは思うけれど、何から削ったらいいか、自分では判断がつかない」
「塾の先生に相談しても、『もっと頑張らせてください』としか言われない」
そう感じていらっしゃるお母さんは、本当に多いです。
そして、これはお母さん一人で抱えるには、あまりにも重い判断なのです。
お子さんの性格、得意・不得意、塾のクラス、志望校、ご家庭の生活リズム。
これらを全部見たうえで、「お宅のお子さんなら、ここから削るのが一番立て直しやすいですよ」とお伝えできる人間が、そばに一人いるだけで、お母さんの肩の荷はずいぶん軽くなると思います。
私の個別相談では、お子さんの今の状況を丁寧にお聞きしたうえで、「削る順番」と「残す順番」を、ご家庭ごとにご一緒に考えます。 オンラインで、お顔を出されなくても構いません。
一人で悩まないでください。 お子さんを立て直す道筋は、必ずあります。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
ー中学受験と不登校(1031)ー
