長年の現場で見届けてきた、合格の先にある「一生の財産」
中学受験の生活面・メンタル面を考える (30)
今日も私のブログにお越しいただき、ありがとうございます。
感謝申し上げます。
中学受験のメンタル面と生活面の課題についてお伝えしてきたこのシリーズも、今回が第30回(最終回)となります。
最後まで長いお話にお付き合いくださり、本当にありがとうございます。
毎日のお弁当作りから、模試の結果に胸を痛め、周囲の無理解の中で、お母様は孤独に頑張ってこられたのだと思います。
膨大な塾のプリントを整理し、SNSで流れてくる他のお子さんの優秀な成績に、何とも言えない焦りを感じた日もあったはずです。
ご主人に相談しても「任せる」と引き気味だったり、ご実家からは「そこまでしなくても」と言われたり。
ここまでこの連載に目を通してくださったということは、お母様がお子さんを誰よりも深く愛し、真剣に向き合っている何よりの証拠なのです。
まずは、今日まで走り抜いてこられたご自身を、心から褒めてあげてください。
いつしか「目的」がすり替わってしまう仕組み
受験勉強を始めたばかりの頃は、「この子に合った環境で生き生きと学んでほしい」「将来の選択肢を広げてあげたい」と願ってスタートしたはずです。
しかし、大手進学塾の激しい競争の中に身を置くと、毎週のテスト、宿題の消化、クラス維持へと、いつの間にか目的がすり替わってしまうことは、本当によくあることです。
親としての焦りから、つい声を荒らげたり、無理をさせてしまったりするのは、ある意味で仕方のないことです。
それはお母様の意志が弱いからではなく、中学受験というシステム自体がそのような構造を持っているからです。
大手進学塾の優れたカリキュラムも、すべてのお子さんに合うわけではありません。
お子さん一人ひとりの体力や気質という「個別性」を無視して無理に合わせようとすると、どこかで必ずひずみが生まれます。
私は長年、不登校の子どもたちの支援の現場を見てきました。
中学受験で心身の限界を超えて頑張りすぎた結果、志望校に入学した後に燃え尽き症候群になってしまったり、学校に通えなくなってしまったりする子どもたちが後を絶ちません。
だからこそ、不登校支援の現場を知る私には、今ここで少し立ち止まり、お子さんの心身の状態を見てブレーキを踏むことの重要性が痛いほどわかります。
お子さんの元気のない様子や、机に向かいたがらない態度、あるいは反抗的な言葉の奥にある「本当の想い」を、そっと心で受け止めてあげてほしいのです。
偏差値や合格校は「結果」であって「軸」ではない
中学受験において本当に守るべきなのは、偏差値や合格校という結果だけではありません。
ご家庭の軸として最も大切なのは、「お子さんの自己肯定感」と「親子の信頼関係」なのです。
この二つがしっかりと守られていれば、たとえ志望校がどこであれ、あるいは不合格という結果であっても、お子さんは中学入学後に自分の力でしなやかに伸びていくことができます。
この大切な軸を、お母様一人で抱え込む必要はありません。
お父様やご祖父母様との間に受験に対する温度差を感じることもあると思います。
そんな時は、ご家庭内で短い時間でも思いを共有する「ファミリーカンファレンス」を開いてみることをお勧めします。
「この受験を通して、子どもにどんな経験をしてほしいか」を短い言葉で共有するだけで、ご家族の足並みは少しずつ揃っていきます。
軸を守り抜いた二つの家族の事例
ここで、ご家庭の軸を守り抜いた二つの事例をご紹介します。
一つ目のご家庭は、お子さんの疲労が見え始めた小学6年生の夏に、思い切って通塾を週5日から週3日に減らし、志望校も無理のない学校に変更しました。
結果としてお子さんは本来の笑顔を取り戻し、見事にその学校に合格して、今は毎日楽しく通っています。
二つ目のご家庭は、小学6年生の秋に受験そのものをやめるという決断をしました。
別の学びの場へと環境を移したことで心身のバランスが回復し、中学生になった今では生き生きと学校生活を送っています。
どちらも間違いなく、そのご家族にとっての「成功」の形なのです。
よくいただく疑問と不安への回答
方針を変えることには、不安がつきまとうものです。よくいただくご質問にお答えします。
- Q1. 今さらペースを落とすのは、甘やかしではないですか?
甘やかしではありません。
お子さんの限界を見極めて守ることは、親としての最も大切な責任であり、長期的な視点における合理的な決断です。 - Q2. 選択肢を狭めてしまうのではと不安です。
心が折れてしまうことこそが、将来の選択肢を狭めます。
心身が健康であれば、将来いくらでも選択肢は広がっていきます。 - Q3. 夫や祖父母が話し合いに応じない、または反対します。
完璧な合意を目指す必要はありません。
お子さんの現在の具体的な心身の様子を客観的に伝え、協力を仰ぐ姿勢を見せることで、少しずつ理解を得ていきましょう。 - Q4. 塾からの引き止めが強引です。
塾の先生の言葉は一つの意見として受け止めつつ、最終的に決めるのはご家庭です。塾の基準に合わせる必要はありません。
ご家庭の軸を再確認する「5つの問い」
今夜、少し落ち着いた時間に、心の中で自問自答していただきたい5つの問いがあります。
- 受験が終わったとき、お子さんにどんな表情でいてほしいでしょうか。
- 今の進め方を続けたとき、ご家族の心身は健康でいられるでしょうか。
- もし不合格だったとしても、何が残っていれば「やってよかった」と言えるでしょうか。
- お子さんが今、安心して本音を話せる場所はありますでしょうか。
- お母様ご自身の心と体に、ゆとりは残っていますでしょうか。
軸が定まると、今後どのように進むべきか「4つの選択肢」が見えてきます。
- 継続調整:
全体のペースは維持しつつ、睡眠時間や宿題の量を調整する道 - 負荷縮小:
塾のコマ数を減らしたり、個別対応に切り替えて負荷を縮小する道 - 志望校変更:
校風や通学の負担を考慮して、志望校を柔軟に変更する道 - 戦略的撤退:
勇気を持って中学受験から撤退し、別の学びの道へ進む道
お子さんを愛するからこその決断であれば、どれを選んでもすべて「正解」なのです。
中学受験は子育ての一つの章にすぎない
中学受験が終わっても、お子さんの人生と子育てはまだまだ続いていきます。
今の状況から決断を変えることには勇気がいりますが、この経験を親子でどう乗り越えたかが、この先に訪れる思春期や自立の強固な土台になります。
30回の連載を、ここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。
ご家族の軸を一人で保ち続けるのは、本当に難しいことです。
でも、けっして一人で悩んで抱え込まなくていいのです。
41年の受験指導と36年の不登校支援の経験から、お子さんの特性に合った道を一緒に探せます。
お母さんの心の整理が必要なとき、ここに相談の場があることを思い出していただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ今日も良い一日でありますようにお祈りしております。
ー中学受験と不登校(1038)ー
